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野村シルク博物館

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先日、西予市野村町にあるシルク博物館をはじめて訪れました。
愛媛の西南部にあり、松山から40km下道をゆっくり走って1時間半ほどでしょうか。
四国カルスト・大野ヶ原があり、町全体が四国山地の支脈に囲まれた自然豊かなのどかな環境で、「ミルクとシルクのまち」=「畜産と養蚕」で栄えた町です。
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野村町の蚕糸業は明治初期にはじまり、大正初期には1100戸を超える養蚕農家があったそう。
当時の暮らしは、一年のうち春から秋にかけて稲作と養蚕を、冬の農閑期に「泉貨紙」づくりを行って生計を立てていたようです。
「そうそう、私の子供の頃はこういう家がまだ沢山ありましたよ。天井を高くして換気をよくする。蚕のことをお蚕さんと言って、人々の暮らし以上に大事に大事に育てられたそうですよ」
蚕小屋の模型を見ながら案内してくれた、ここの卒業生Yさんが教えてくれました。
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博物館では当時の蚕糸業まつわる資料や、まゆや生糸の生産に使われていた道具などが展示されています。
道具そのものが非常に美しい形をしていることにも自ずと目がいく、まさに用の美かな。

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現在は常設のほか、祇園祭理事長・吉田孝次郎コレクション「江戸時代 ヨーロッパを遊ぶ」展が開催中されています。
江戸時代中期、裕福な町人を中心に流行したヨーロッパ更紗。吉田氏の所蔵する18~19世紀のヨーロッパ更紗を中心に展示。
平日とはいえ来館者がいないのがもったいない・・・。

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昭和8年にできた製糸工場で作られる野村町産の生糸は、「カメリア(白椿)」として商標登録、国の内外で高い評価を受けました。昭和28年に行われた、イギリス女王・エリザベス2世の戴冠式で女王のドレスの一部に使用されたり、20年に一度行われる伊勢神宮の式年遷宮に奉納しているのもここ野村町の生糸です。

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また博物館では、毎年「染織講座」を開講。
全国で唯一「町内で生産した繭からの糸づくり、染織、手機織りまで」の全行程を指導する講座で、毎年10人前後受け入れています。
「こんなのを教えてくれるところ、他にはありませんから」
と関東から来られた若い女性が熱い視線で話してくれました。
特に賑わったショッピング街もレジャー施設もないところへ単身住み込みで来られるのは、よほどの志がないと難しいこと。
この日はとて日射しの強い日。湿度が高く、じっと立ってるだけでのぼせそうなくらい蒸し暑い中、研修生さんの大半は外で紅花つみと草むしりされていました。

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ご好意で、天蚕のビニルハウスへも潜入。はじめはどこにいるかわからなかったが、目が慣れてくるとココにもココにも発見しました!わかりますか?(写真向かって左上の毛があるやつ)

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全国の生糸を取り巻く環境は、ある程度予測はつきますが輸入品におされ非常に厳しい環境です。せいよ観光物産サイトによりますと、
「現在(2013)日本製の生糸は、生糸の全国シェアの約0.6%、
あとは、全部中国からの輸入生糸によるもの。
その国内産0.6%のうち、0.2%が野村産」
なんだそうです。日本の生糸そのものが非常に貴重なものとなり、そのわずかな全体量の2割が野村産。
これは県内ですらあまり知られていないことだと思いますが、野村のシルクは世界に誇れる貴重な産業です。
野村のシルクは「生引き」という特殊な技法を用いて、水分を多く含んだまま紡がれるため、外国産に比べて糸を引く力もそれほど強くありません。それゆえ量産はできませんが、その分ふんわりとしっとり柔らかい生糸に仕上がります。
質の高さを誇る野村のシルクですが今回話を伺うに、今やなんと養蚕農家5戸。
存続の危機に貧しています。
世界的な視野で地域の誇りある産業として盛り上げていくか否か、ここが一つの分岐点。
伝統的な農林水産物や食品の地理的表示を知的財産として守る「地理的表示保護制度」の運用に「伊予生糸(いよいと)」の登録申請したのは記憶に新しいところです。
担い手が生まれるには、まず生業としてやっていけること。
その土地に根付いてきたものづくりの価値を認め、後継者や新たな参入者が生業として収入を得てやっていけれるように何とかバックアップがないのものか。
いち個人ではどうにもできませんが、もどかしい気持ちを抱えて博物館を後にしました。
微かな望みは、野村のシルクを使いたいという需要が各方面で生まれていること。
衰退してはもったいない手仕事です。



野村シルク博物館
〒797-1212
愛媛県西予市野村8-177-1
☎0894-72-3710
9:00~17:00
定休日・月曜
by karin-since2011 | 2015-07-16 18:59 | 愛媛歩き